せっかく足を運ぶのだから、個性的な料理がたべたい
温泉旅館のガイドブックには必ず外観(施設)・風呂・料理の写真が掲載されている。これも一つの温泉旅館における三種の神器(もちろん背景にはサービスが加わる)。この三拍子に満足できる旅館を探すのも難しいと思いますが、個人的に絶対外せないのは料理。でもですね、人気旅館の料理というのは美しく・バランスよく・品数豊富な会席風料理が多くて、「おフランス料理より豚カツ定食よね」という私の嗜好にはちょっと合いません。家に帰ってから何を食べてきたんだか思い出せないんですよね。
地元料理の決定版
まあ旅館の料理とはやはり万民を意識してそんなものなのか、と思っていたときに出会ったのが取材で行ったお宿東山閣です。ここの料理は「下野煮」「特性山奥寿司」「わらじ揚げ」と個性的なネーミングが並ぶ。「なんだ煮物に寿司に天ぷらじゃあないか」とお思いのアナタ。実は私も取材に行くまではそう思っていました。「見た目は地味だけど味には自信がある」という副支配人の言葉にも「いい写真が撮れるのだろうか」と不安さえ覚えたものです。
だがしかし、出てきた料理はどれも個性派揃い。中でも珍しかったのは「下野煮」と言われる根菜や巻き湯葉・鳥肉などを使った煮物。ご当地で採れる乳茸というきのこをだし汁に使った逸品で、地元でももうこの乳茸を使った料理ができる人は少ないということです。「地のもの」が食べたいという宿泊客の要望を受けて、地元の人たちと相談。この乳茸料理に白羽の矢が立ったとか。乳茸はだし汁を取ると、ミルクのような白い液体が出てくるのがその名の由来です。一見、だし汁とみりん・酒に薄口しょう油で味を付けた普通の煮物ですが、なんと言っても香りが独特であつあつの煮物から立ち上る湯気からは上品でほのかな甘い香りが広がります。しかも人数分がドーンと一緒に盛られて出されるので、この珍しい料理の話に花が咲くことは間違いなし。まさに「見た目は地味だけど味には自信がある」と豪語するだけの料理でした。
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